REPORT
Lake Biwa Museum Event about Goodbye, Lara.
『さよならララ』×琵琶湖博物館スペシャルイベント「びわ博と見る『さよララ』」レポートが到着!
オリジナルTVアニメーション『さよならララ』の制作に協力している滋賀県立琵琶湖博物館とのコラボレーションが、8月29日(土)よりスタート。展示初日となるこの日、同館ホールにて『さよならララ』×琵琶湖博物館スペシャルイベント「びわ博と見る『さよララ』」が開催された。本作の監督・小出卓史、クリエイティブプロデューサー・森山菜月に加え、琵琶湖博物館から専門学芸員・鈴木隆仁、主任学芸員・田畑諒一が登壇。制作の裏側から「もし人魚が実在したら」という生態考察まで、作品と絡めた貴重なトークが繰り広げられた。
MCの呼び込みにより4名がステージに登場すると、会場からは温かな拍手が送られた。小出卓史監督、森山菜月クリエイティブプロデューサーの自己紹介に続けて、鈴木は「琵琶湖博物館の学芸員で、主に小さな生き物を担当しております」、田畑は「僕は魚の担当をしております」と、それぞれの専門を添えて自己紹介した。
最初のコーナーは「さよララとびわ博」。まずは本作が生まれた経緯から話が始まった。小出は「アイデア自体は5年くらい前から少しずつ作っていました。オリジナルアニメを作りたいとなった時に、人魚姫と、私は滋賀県出身なんですけど、その滋賀県を舞台にしたアニメを作りたいと思って、ゼロから始まったところなんです」と振り返り、「琵琶湖を描く、そして琵琶湖のすべての魚のことを取材する必要があるという中で、琵琶湖博物館さんとご一緒させていただくことができました」と、同館との出会いを語った。
滋賀県出身の小出にとって、琵琶湖博物館は幼い頃から親しんだ場所でもあるそうで「もうこの場所に何回来たんだろうというくらい来ているんですよ。小学校の校外学習でも来るし、親と来たりとか。かなり広くてすごく充実した場所なんです。ぜひこの場所を皆様に知ってほしいなと思っていたので、ここでイベントをやれて嬉しかったです」と笑顔を見せた。
森山はロケーション取材当時を回想し、「人魚をテーマにした作品をやるにあたって、お魚周りを一体誰に聞けばいいんだろうというところで、水産業の方や漁業の方に電話して聞いていたんです。でも漁業となると獲る魚しか分からないので、もっと広い枠でいろんな魚のことを聞くなら『あそこがいいですよ』と、皆様口を揃えて琵琶湖博物館さんをおすすめしてくださった。本当に大変ありがたいご縁でございます」と、制作陣が同館にたどり着くまでの経緯を明かした。ロケハン時の写真がスクリーンに映し出されると、「初めてびわ博に来て記念に写真を撮る監督ですね。とっても懐かしいです」と目を細めた。
一方、依頼を受けた博物館側にとっても、これは初めての経験だった。鈴木は「アニメーションの監修の依頼が来るのは、これが初めてになります」ときっぱり。「教育系の番組でうちの魚の映像を使いたいとか、『こういった生き物を出したいんだけど、この説明で合っているか』とか、学習系の監修はこれまでにも結構ありました」と、これまでの実績との違いを語った。
続いては、学芸員2人が選んだ「好きなシーン」。鈴木が挙げたのは、人魚のうろこの描写と、琵琶湖に浮かぶ巨大な魚のようなオブジェが口を開くシーンだ。「僕が小さな生き物を選んでいる理由は、得体の知れないものが多かったり、細かい模様が綺麗だったりするからなんです。今回の作画もよく見てみると、ウロコの表面がしっかりと描き込まれていたり、ただ魚の形とはちょっと違う感じに見えていたり。大きな魚のようなオブジェの、口がニチャッと開く時のあの不気味さがしっかりと表現されていて、すごくグッとくるものがあったので選ばせていただきました」と熱を込める。小出は「目線が琵琶湖博物館さんの目線という感じで、すごくグッと来ました」と喜び、森山も「”生物的な部分でグッとくる”ので”このシーンが好き”、というご意見はなかなかないですね」と続けた。
田畑が選んだのは、第6話に登場する同館のトンネル水槽のシーン。だが、その理由は思いがけないものだった。「左に出ているビワマスという魚、これちょっと本物と違うんですよね。あぶらびれというヒレがサケ科にはあるんですけど、無いんですよ」。会場がどよめく中、「リサの専門分野が『環境DNA』と書いてあったのをご覧になりましたか。僕もDNAの研究をしているんですけど、魚の組織を切り取ってそこからDNAを読むんです。もしかしたらこのビワマスは、あぶらびれを切り取られているんじゃないかなと」。さらに「実際、うちの水族展示室にいるアユモドキという魚は、この前僕がDNA分析用に全部の個体のヒレを切ってから展示しています」と明かすと、会場は爆笑に包まれた。
制作サイドの小出も「そういうことです! 自信を持って言えます。さすが監修です」と便乗しつつ、「ちょっと言い訳をすると、あの魚の動きを描くのがすごく大変なんですよ。表面のテラッとしたところとか、実物は本当に輝かしい、光をまとっているんです。それを再現しようと苦心した結果です」と苦笑した。
後半は「びわ博が見る『さよララ』 〜もしも人魚が存在するなら〜」と題したコーナーへ。「もし実際に人魚がいたらどんなものなんだろう」を専門家と制作陣が本気で考える、夏休みの自由研究にぴったりの企画だ。
まずは科学者から見た「人魚」について。鈴木は「人魚は基本的にフィクションの生き物ですので、『こういう生態で』という話が論文になっていることはありません。ただ民俗学や歴史学のところでは、実際に滋賀県には人魚のミイラがあったりもします」と切り出し、江戸時代の絵師・川原慶賀が生き物を克明にスケッチしていたことにも触れた。小出も「滋賀県で人魚の作品を作るとなった時に、真っ先に調べました」と応じる。鈴木は「民俗学の担当学芸員に調べてもらったところ、滋賀県で日本の中では一番古い人魚が見つかっていたりします」と、この地ならではの背景を紹介した。
続いて話題は、ララが眠っていた沖島周辺の環境へ。展示されている湖底模型を前に、鈴木が「沖島のすぐ北側は北湖と言われているあたりで、特に突然ストンと深くなっています。逆に東側の陸に近い側は、わりかし浅いところが続いている。南北ですごく環境が変わってくる島になっています」と解説すると、小出は「ちょうどこの場所を一番最初にロケハンさせてもらった時に見せてもらって、360度カメラを回して撮っていたんですよ。『あ、ここから出るんだ』って。うちのアニメは湖底を描くことも多いので、すごく参考になりました」と制作時のエピソードを重ねた。
森山と田畑は準備段階の議論も披露する。森山が「『ララが出てきた時に水草が本当は引っかかっていたんじゃないか』という話を結構していたんです。」と切り出すと田畑が「でも沖島のあたりは、北の方はほとんど水草が無くて深くて、岩場がゴロゴロしている場所なので、岩の隙間からポンと出てきたら水草は被ってないよね、と」と続ける。鈴木が「南湖あたりの水深は4〜5メートルで、それに対して北湖は平均40メートルと言われています。そうすると底の方はほとんど真っ暗」と補足すると、小出と森山は「本当に勉強になります」と笑った。
そしていよいよ、人魚の生態考察へ。スクリーンにララのアニメ設定と場面カットが並ぶと、小出が制作側の意図を明かす。「我々アニメを作っている立場としては、なるべく真剣に考えられるところは真剣に作っているんです。撥水性がある髪の毛だったり。だから茉里は濡れると髪の毛がズブズブになるんですけど、ララは水から出てきてもツルッとしている。涙も、本来水の中で涙を出してもそのまま分散してしまうと思うんですけど、少し油分が入っていて、水の中の油の滴みたいに排出するんですよね」。そして「どう思われますか?」と学芸員に投げかけた。
鈴木は「よくこの手の質問で『人魚はいますか?』と聞かれると『いないです』と答えるんですけど、今回は『います』から始まります」と前置きし、真顔で考察を始める。「毛に撥水効果があるかというと、実はアザラシの仲間、海獣と呼ばれるやつですね。水を弾いて、できるだけ毛と毛の間に水が残らないようにしている。撥水する毛を持っているというのは、体温保持の上で非常に重要になってきます」。涙についても「魚類は基本的に涙を流さない。それに対してイルカは眼球の保護のために粘液を出しますので、水と混ざり溶けないようになっている。そういった意味では、こうやって涙となって見える可能性は十分あります」と説明した。
議論が白熱したのは、ララが哺乳類なのか魚類なのかという一点。鈴木はララの誕生シーンを取り上げ、「人魚は下が魚っぽく、上は人間っぽい。魚っぽい下半身を手に入れた人類に近いものなのか、人類っぽい上半身を手に入れた魚なのか。これによって卵で生まれるのか子供で生まれるのかが変わってきます」と切り込む。さらに「学芸員で話していて出た、非常に恐ろしい説がありまして。魚の中には卵を守るために卵を貝の中に入れて、その貝の中で育つやつがいるんです。ひょっとしたら貝の中に産んで、子供はその貝を食べて育つのではないかと。最後に貝柱を食いちぎって、パカッと開いたら生まれてくる」と語ると、会場からは驚きの声が漏れた。小出は「よく調べてみないと分かりませんね。私も中を見たことが無いので」と苦笑いを浮かべた。
泳ぎ方の映像が流れると、鈴木の見立てはさらに具体的になる。「最初はイルカの尾っぽ的な感じで考えていたんですけど、明らかに関節があるんですよね。どう考えても太ももとふくらはぎと。おそらくあの中には融合した足が入っているのであろうと」。ウロコについても「僕が気になっているのは、ウロコに放射状に線が入っていること。魚のウロコは基本的に年輪状に模様が入りますので、そういった意味ではセンザンコウ、アルマジロみたいな生き物ですね。あれは爪とか髪の毛の成分が固まったウロコになっているので、放射状の線が入りがちなんです。哺乳類的なウロコの形になっているのかな」と、哺乳類説へ傾いていった。
ところが、ここで田畑が反論する。「哺乳類やイルカの仲間もみんな肺呼吸をするので、息のために1回水面に上がらなきゃいけない。ララがそうやって息をするために上がっているシーンって、多分ここまで無いですよね」。小出が「無いですね」と認めると、「となるとエラ呼吸の可能性が高い。ララは実は魚側じゃないのかなと僕は思っています」と主張。鈴木も「これが哺乳類説を推す上で一番痛いところで。イルカやクジラは、長い時間海で過ごしているにも関わらずエラは無いんです。一度エラを失った生き物はエラの再獲得はしなかった。どうしようか」と頭を抱え、会場の笑いを誘った。
議論は「哺乳類か、魚類か」から「両生類ではないか」へと発展。鈴木が「カエルは水の中にいる時はエラ呼吸で、カエルになると肺呼吸になる。エラ呼吸を残したまま肺を手に入れれば、エラと肺の両方を持った生き物が出来上がるわけです」と提案すれば、田畑は「両生類だとウロコが無いです」と即座に切り返す。そして「肺魚やシーラカンスは魚類なんですけど、肉鰭類という肉のヒレを持つ仲間で、哺乳類や両生類に進化する系統で、普通の魚の系統とはちょっと違うんですね。僕はシーラカンス、肺魚系を推しておきます」と自説を貫いた。あまりの白熱ぶりに、小出が「これアニメのイベントですか? 不思議なイベントになっております」とツッコミを入れると、会場は大きな笑いに包まれた。
コーナーの締めくくりに鈴木は、「現実になかなか見ることのない生き物がどういう生態かを一度想像してみるのは、面白い機会だと思います。人魚に関わらず色んな幻想の生き物で『こんな生態だったら行けるんじゃない?』と考えてみるのも面白いんじゃないかなと。特に本作は結構しっかり作り込まれていますので、何かしら理由付けしようと思えばできる。皆様もぜひいろんな説を考えてみてください」と来場者に呼びかけた。
トーク終了後には、作品の最新情報が続々と発表された。この日より琵琶湖博物館でスタートしたコラボ展示では、第6話を中心とした制作資料に加え、リサとコータの等身大スタンディが登場。一部には貴重な制作資料も並ぶ。開催期間は10月31日(土)まで。さらに、翌8月30日(日)より第9話が放送・配信開始となること、滋賀県で開催中の周遊デジタルスタンプラリーが9月21日より第2弾に突入することも告知された。
また、本作を題材にした自由研究を募集する企画「さよララ 夏の自由研究」の応募締切が8月31日(月)に迫っていることもアナウンス。受賞作品は小出自らが選出するといい、「Xで皆さんが投稿してくださるのを見るのがいつも楽しいです。皆さん本当にすごいなと思っています。あと、この締切がリアルすぎてちょっと怖いですね。夏休みの終わりの……なんか頭が痛くなってきます」と笑わせた。
イベントの最後には、登壇者一人ひとりから来場者へメッセージが贈られた。
田畑「皆さん楽しんでいただけましたでしょうか。この後、博物館に『ララ』に出てきたシーンがいっぱいありますので、展示の方を見ていただければなと思います。今日はありがとうございました」
鈴木「今日のトークショーは、本当にアニメのトークショーだったのかなと(笑)。好き放題喋らせてもらいましたし、アニメを見ながら『このへんどうなのかな』と思いながら喋り放題喋れましたので、少なくとも私は満足しております。皆様も楽しんでいただけましたら幸いです。ありがとうございました」
森山「琵琶湖博物館さんを初めて取材した時から、館内を見て、案内してもらって色んな話を聞いて、もう何十時間も過ごしているんですけれども、今日この場で聞いた話でもまた新たに面白い話がある。本当に材料が尽きないです。ぜひ『ララ』を見てほしいというのと、プラスアルファで博物館の方も堪能していただければなと思っております。本日は本当にありがとうございました!」
小出「本日はちょっと珍しいイベントでしたけど、お越しいただきまして本当にありがとうございました。展示の方もすごく力が入っていて、バックヤードにリサがいるんじゃないかと思ったくらい、ちゃんと作り込まれています。展示だけじゃなくてこの博物館、本当に何時間いても充実した展示がたくさんあるので、皆様もぜひ楽しんで見ていってください。本日は本当にありがとうございました!」
最後は本作恒例の挨拶で締めくくり。MCの「せーの!」の合図に合わせ、登壇者と会場が声を揃えて『さよララ〜!』と手を振ると、大きな拍手の中、イベントは幕を閉じた。
MCの呼び込みにより4名がステージに登場すると、会場からは温かな拍手が送られた。小出卓史監督、森山菜月クリエイティブプロデューサーの自己紹介に続けて、鈴木は「琵琶湖博物館の学芸員で、主に小さな生き物を担当しております」、田畑は「僕は魚の担当をしております」と、それぞれの専門を添えて自己紹介した。
最初のコーナーは「さよララとびわ博」。まずは本作が生まれた経緯から話が始まった。小出は「アイデア自体は5年くらい前から少しずつ作っていました。オリジナルアニメを作りたいとなった時に、人魚姫と、私は滋賀県出身なんですけど、その滋賀県を舞台にしたアニメを作りたいと思って、ゼロから始まったところなんです」と振り返り、「琵琶湖を描く、そして琵琶湖のすべての魚のことを取材する必要があるという中で、琵琶湖博物館さんとご一緒させていただくことができました」と、同館との出会いを語った。
滋賀県出身の小出にとって、琵琶湖博物館は幼い頃から親しんだ場所でもあるそうで「もうこの場所に何回来たんだろうというくらい来ているんですよ。小学校の校外学習でも来るし、親と来たりとか。かなり広くてすごく充実した場所なんです。ぜひこの場所を皆様に知ってほしいなと思っていたので、ここでイベントをやれて嬉しかったです」と笑顔を見せた。
森山はロケーション取材当時を回想し、「人魚をテーマにした作品をやるにあたって、お魚周りを一体誰に聞けばいいんだろうというところで、水産業の方や漁業の方に電話して聞いていたんです。でも漁業となると獲る魚しか分からないので、もっと広い枠でいろんな魚のことを聞くなら『あそこがいいですよ』と、皆様口を揃えて琵琶湖博物館さんをおすすめしてくださった。本当に大変ありがたいご縁でございます」と、制作陣が同館にたどり着くまでの経緯を明かした。ロケハン時の写真がスクリーンに映し出されると、「初めてびわ博に来て記念に写真を撮る監督ですね。とっても懐かしいです」と目を細めた。
一方、依頼を受けた博物館側にとっても、これは初めての経験だった。鈴木は「アニメーションの監修の依頼が来るのは、これが初めてになります」ときっぱり。「教育系の番組でうちの魚の映像を使いたいとか、『こういった生き物を出したいんだけど、この説明で合っているか』とか、学習系の監修はこれまでにも結構ありました」と、これまでの実績との違いを語った。
続いては、学芸員2人が選んだ「好きなシーン」。鈴木が挙げたのは、人魚のうろこの描写と、琵琶湖に浮かぶ巨大な魚のようなオブジェが口を開くシーンだ。「僕が小さな生き物を選んでいる理由は、得体の知れないものが多かったり、細かい模様が綺麗だったりするからなんです。今回の作画もよく見てみると、ウロコの表面がしっかりと描き込まれていたり、ただ魚の形とはちょっと違う感じに見えていたり。大きな魚のようなオブジェの、口がニチャッと開く時のあの不気味さがしっかりと表現されていて、すごくグッとくるものがあったので選ばせていただきました」と熱を込める。小出は「目線が琵琶湖博物館さんの目線という感じで、すごくグッと来ました」と喜び、森山も「”生物的な部分でグッとくる”ので”このシーンが好き”、というご意見はなかなかないですね」と続けた。
田畑が選んだのは、第6話に登場する同館のトンネル水槽のシーン。だが、その理由は思いがけないものだった。「左に出ているビワマスという魚、これちょっと本物と違うんですよね。あぶらびれというヒレがサケ科にはあるんですけど、無いんですよ」。会場がどよめく中、「リサの専門分野が『環境DNA』と書いてあったのをご覧になりましたか。僕もDNAの研究をしているんですけど、魚の組織を切り取ってそこからDNAを読むんです。もしかしたらこのビワマスは、あぶらびれを切り取られているんじゃないかなと」。さらに「実際、うちの水族展示室にいるアユモドキという魚は、この前僕がDNA分析用に全部の個体のヒレを切ってから展示しています」と明かすと、会場は爆笑に包まれた。
制作サイドの小出も「そういうことです! 自信を持って言えます。さすが監修です」と便乗しつつ、「ちょっと言い訳をすると、あの魚の動きを描くのがすごく大変なんですよ。表面のテラッとしたところとか、実物は本当に輝かしい、光をまとっているんです。それを再現しようと苦心した結果です」と苦笑した。
後半は「びわ博が見る『さよララ』 〜もしも人魚が存在するなら〜」と題したコーナーへ。「もし実際に人魚がいたらどんなものなんだろう」を専門家と制作陣が本気で考える、夏休みの自由研究にぴったりの企画だ。
まずは科学者から見た「人魚」について。鈴木は「人魚は基本的にフィクションの生き物ですので、『こういう生態で』という話が論文になっていることはありません。ただ民俗学や歴史学のところでは、実際に滋賀県には人魚のミイラがあったりもします」と切り出し、江戸時代の絵師・川原慶賀が生き物を克明にスケッチしていたことにも触れた。小出も「滋賀県で人魚の作品を作るとなった時に、真っ先に調べました」と応じる。鈴木は「民俗学の担当学芸員に調べてもらったところ、滋賀県で日本の中では一番古い人魚が見つかっていたりします」と、この地ならではの背景を紹介した。
続いて話題は、ララが眠っていた沖島周辺の環境へ。展示されている湖底模型を前に、鈴木が「沖島のすぐ北側は北湖と言われているあたりで、特に突然ストンと深くなっています。逆に東側の陸に近い側は、わりかし浅いところが続いている。南北ですごく環境が変わってくる島になっています」と解説すると、小出は「ちょうどこの場所を一番最初にロケハンさせてもらった時に見せてもらって、360度カメラを回して撮っていたんですよ。『あ、ここから出るんだ』って。うちのアニメは湖底を描くことも多いので、すごく参考になりました」と制作時のエピソードを重ねた。
森山と田畑は準備段階の議論も披露する。森山が「『ララが出てきた時に水草が本当は引っかかっていたんじゃないか』という話を結構していたんです。」と切り出すと田畑が「でも沖島のあたりは、北の方はほとんど水草が無くて深くて、岩場がゴロゴロしている場所なので、岩の隙間からポンと出てきたら水草は被ってないよね、と」と続ける。鈴木が「南湖あたりの水深は4〜5メートルで、それに対して北湖は平均40メートルと言われています。そうすると底の方はほとんど真っ暗」と補足すると、小出と森山は「本当に勉強になります」と笑った。
そしていよいよ、人魚の生態考察へ。スクリーンにララのアニメ設定と場面カットが並ぶと、小出が制作側の意図を明かす。「我々アニメを作っている立場としては、なるべく真剣に考えられるところは真剣に作っているんです。撥水性がある髪の毛だったり。だから茉里は濡れると髪の毛がズブズブになるんですけど、ララは水から出てきてもツルッとしている。涙も、本来水の中で涙を出してもそのまま分散してしまうと思うんですけど、少し油分が入っていて、水の中の油の滴みたいに排出するんですよね」。そして「どう思われますか?」と学芸員に投げかけた。
鈴木は「よくこの手の質問で『人魚はいますか?』と聞かれると『いないです』と答えるんですけど、今回は『います』から始まります」と前置きし、真顔で考察を始める。「毛に撥水効果があるかというと、実はアザラシの仲間、海獣と呼ばれるやつですね。水を弾いて、できるだけ毛と毛の間に水が残らないようにしている。撥水する毛を持っているというのは、体温保持の上で非常に重要になってきます」。涙についても「魚類は基本的に涙を流さない。それに対してイルカは眼球の保護のために粘液を出しますので、水と混ざり溶けないようになっている。そういった意味では、こうやって涙となって見える可能性は十分あります」と説明した。
議論が白熱したのは、ララが哺乳類なのか魚類なのかという一点。鈴木はララの誕生シーンを取り上げ、「人魚は下が魚っぽく、上は人間っぽい。魚っぽい下半身を手に入れた人類に近いものなのか、人類っぽい上半身を手に入れた魚なのか。これによって卵で生まれるのか子供で生まれるのかが変わってきます」と切り込む。さらに「学芸員で話していて出た、非常に恐ろしい説がありまして。魚の中には卵を守るために卵を貝の中に入れて、その貝の中で育つやつがいるんです。ひょっとしたら貝の中に産んで、子供はその貝を食べて育つのではないかと。最後に貝柱を食いちぎって、パカッと開いたら生まれてくる」と語ると、会場からは驚きの声が漏れた。小出は「よく調べてみないと分かりませんね。私も中を見たことが無いので」と苦笑いを浮かべた。
泳ぎ方の映像が流れると、鈴木の見立てはさらに具体的になる。「最初はイルカの尾っぽ的な感じで考えていたんですけど、明らかに関節があるんですよね。どう考えても太ももとふくらはぎと。おそらくあの中には融合した足が入っているのであろうと」。ウロコについても「僕が気になっているのは、ウロコに放射状に線が入っていること。魚のウロコは基本的に年輪状に模様が入りますので、そういった意味ではセンザンコウ、アルマジロみたいな生き物ですね。あれは爪とか髪の毛の成分が固まったウロコになっているので、放射状の線が入りがちなんです。哺乳類的なウロコの形になっているのかな」と、哺乳類説へ傾いていった。
ところが、ここで田畑が反論する。「哺乳類やイルカの仲間もみんな肺呼吸をするので、息のために1回水面に上がらなきゃいけない。ララがそうやって息をするために上がっているシーンって、多分ここまで無いですよね」。小出が「無いですね」と認めると、「となるとエラ呼吸の可能性が高い。ララは実は魚側じゃないのかなと僕は思っています」と主張。鈴木も「これが哺乳類説を推す上で一番痛いところで。イルカやクジラは、長い時間海で過ごしているにも関わらずエラは無いんです。一度エラを失った生き物はエラの再獲得はしなかった。どうしようか」と頭を抱え、会場の笑いを誘った。
議論は「哺乳類か、魚類か」から「両生類ではないか」へと発展。鈴木が「カエルは水の中にいる時はエラ呼吸で、カエルになると肺呼吸になる。エラ呼吸を残したまま肺を手に入れれば、エラと肺の両方を持った生き物が出来上がるわけです」と提案すれば、田畑は「両生類だとウロコが無いです」と即座に切り返す。そして「肺魚やシーラカンスは魚類なんですけど、肉鰭類という肉のヒレを持つ仲間で、哺乳類や両生類に進化する系統で、普通の魚の系統とはちょっと違うんですね。僕はシーラカンス、肺魚系を推しておきます」と自説を貫いた。あまりの白熱ぶりに、小出が「これアニメのイベントですか? 不思議なイベントになっております」とツッコミを入れると、会場は大きな笑いに包まれた。
コーナーの締めくくりに鈴木は、「現実になかなか見ることのない生き物がどういう生態かを一度想像してみるのは、面白い機会だと思います。人魚に関わらず色んな幻想の生き物で『こんな生態だったら行けるんじゃない?』と考えてみるのも面白いんじゃないかなと。特に本作は結構しっかり作り込まれていますので、何かしら理由付けしようと思えばできる。皆様もぜひいろんな説を考えてみてください」と来場者に呼びかけた。
トーク終了後には、作品の最新情報が続々と発表された。この日より琵琶湖博物館でスタートしたコラボ展示では、第6話を中心とした制作資料に加え、リサとコータの等身大スタンディが登場。一部には貴重な制作資料も並ぶ。開催期間は10月31日(土)まで。さらに、翌8月30日(日)より第9話が放送・配信開始となること、滋賀県で開催中の周遊デジタルスタンプラリーが9月21日より第2弾に突入することも告知された。
また、本作を題材にした自由研究を募集する企画「さよララ 夏の自由研究」の応募締切が8月31日(月)に迫っていることもアナウンス。受賞作品は小出自らが選出するといい、「Xで皆さんが投稿してくださるのを見るのがいつも楽しいです。皆さん本当にすごいなと思っています。あと、この締切がリアルすぎてちょっと怖いですね。夏休みの終わりの……なんか頭が痛くなってきます」と笑わせた。
イベントの最後には、登壇者一人ひとりから来場者へメッセージが贈られた。
田畑「皆さん楽しんでいただけましたでしょうか。この後、博物館に『ララ』に出てきたシーンがいっぱいありますので、展示の方を見ていただければなと思います。今日はありがとうございました」
鈴木「今日のトークショーは、本当にアニメのトークショーだったのかなと(笑)。好き放題喋らせてもらいましたし、アニメを見ながら『このへんどうなのかな』と思いながら喋り放題喋れましたので、少なくとも私は満足しております。皆様も楽しんでいただけましたら幸いです。ありがとうございました」
森山「琵琶湖博物館さんを初めて取材した時から、館内を見て、案内してもらって色んな話を聞いて、もう何十時間も過ごしているんですけれども、今日この場で聞いた話でもまた新たに面白い話がある。本当に材料が尽きないです。ぜひ『ララ』を見てほしいというのと、プラスアルファで博物館の方も堪能していただければなと思っております。本日は本当にありがとうございました!」
小出「本日はちょっと珍しいイベントでしたけど、お越しいただきまして本当にありがとうございました。展示の方もすごく力が入っていて、バックヤードにリサがいるんじゃないかと思ったくらい、ちゃんと作り込まれています。展示だけじゃなくてこの博物館、本当に何時間いても充実した展示がたくさんあるので、皆様もぜひ楽しんで見ていってください。本日は本当にありがとうございました!」
最後は本作恒例の挨拶で締めくくり。MCの「せーの!」の合図に合わせ、登壇者と会場が声を揃えて『さよララ〜!』と手を振ると、大きな拍手の中、イベントは幕を閉じた。